女医

腹膜播種の治療可能性

難治性に対する発想の転換

腹痛

胃や大腸などの消化器官は腹腔内にあり、腹膜と呼ばれる膜に包まれています。この腹膜自体は特定の働きをしている臓器ではありませんが、虫垂炎の悪化等によって腹膜炎を起こすと命にも関わりかねません。同様のことは癌に関しても言えます。胃癌や大腸癌などの病状が進行して、腹膜にまで転移する例があるのです。癌細胞が腹膜に転移して炎症を起こし、腹水が溜まってきた状態を癌性腹膜炎と呼びます。癌の進行度合いを示す指標としてはステージ4に相当し、完治が困難とも言われています。基本的には手術で取り除くことができないため、治療法としては可能な限りの延命措置とQOL(生活の質)向上に焦点が移るのです。こうした状況でも、発想の転換によって癌と立ち向かうことができます。癌性腹膜炎は治すのが難しい病気ですが、病院ではさまざまな手段を使って患者さんが楽になれるよう努力しています。腹水が溜まってくると腹部の張りや吐き気など不快な症状が出てきます。これを解消するために腹水を抜く処置も行われます。癌に伴う痛みも鎮痛剤で抑えることが可能です。どのような治療法を選択するかは、患者さんの意思が最大限に尊重されます。

新しい治療法の持つ可能性

これまで癌性腹膜炎は治療することができないと考えられてきましたが、その常識も医学の進歩によって変わりつつあります。腹膜に転移した癌細胞を退治するためにはミクロの力が必要です。この分野ほど最新研究が目覚ましい部門はありません。免疫療法は癌治療としては比較的新しい分野です。膵臓癌など手術の難しい癌の治療に免疫療法が成果を発揮しており、新しい技術が次々と生み出されています。患者さん自身の免疫細胞を使って癌細胞を攻撃させるため、抗癌剤よりも副作用の少ない点が大きな特長です。活性化リンパ球療法や樹状細胞療法といった種類が知られていますが、癌性腹膜炎の治療にはNK細胞療法が最も高い効果を発揮します。抗癌剤の分野でも近年では新しい薬剤の研究が進行中です。現在臨床実験が行われている薬剤では、高い確率で癌細胞の縮小や腹水の減少が確認されています。副作用の少ないタイプの抗癌剤も開発されており、癌と戦う患者さんへの朗報が待たれているのです。こうした最新技術は現時点で標準治療としては確立されていませんが、近い将来には癌治療を大きく変える可能性を秘めています。癌性腹膜炎が治るようになる可能性も十分にあるのです。